今回は
今後、円安に転換するのかこのまま円高が進むのかという判断の参考になる記事を掲載します。
以下の記事を読むといかにも円安になるだろうと思われがちですが、為替というのはあくまでもドル/円であればドルと円との相対的な比較であり、ユーロ/円であれば対ユーロとの比較であるということです。
円は確かに悪い状況ではあるが、今現在円高に進んでいる理由は円よりもドルやユーロのほうがもっと悪い状況にあるからです。これがアメリカ経済がもし持ち直せば一気に円安に転換する事でしょう。
今後発展途中の国、例えば中国や東南アジアの国の通貨が流通するようになれば対日本円では明らかに円安になっていくでしょう。
以下、日経新聞電子版より引用
「円が大暴落すると思うこれだけの理由」 フジマキ・ジャパン社長 藤巻健史氏
2012/7/12 7:00日本経済新聞 電子版
「財政破綻というハードランディングは奇跡でも起こらない限り不可避」
消費税の増税法案が6月26日に衆院を通過した。軸をぶらさずに通した野田首相のことを見直した一方、この期に及んで消費税率の引き上げに反対する政治家は「緊縮財政反対」と駄々をこねるギリシャ人よりひどいとあきれ返った。ポピュリズム政治(衆愚政治)でないならば国民に不人気な増税法案であろうと最後の最後まで財政再建のために努力するのが政治家の責務だ。
とは言いながらも、この
消費税の10%への上げは財政破綻の時期を遅らせるだけで根本的解決策にはならない。焼け石に水だ。財政破綻というハードランディングは奇跡でも起こらない限り不可避である。
消費税収は現在5%で10兆2000億円(2011年度)であるから消費税1%あたり2兆円の税収となる(注参照)。だとすると、
昨年度の単年度赤字の44兆円、今年度予算でも44兆円の赤字である財政を黒字化するためには消費税を22%上げなければならない。さらには959兆円もたまった累積赤字を96年で返すためには毎年10兆円ずつ返済しなければならないが、このためにはさらに5%の消費税増税が必要だ。ここまでで消費税は32%となる。
さらには、今でこそゼロ金利だからいいようなものの959兆円も借金がたまった以上、金利が上がり始めれば大変なことになる。1%金利が上がれば、すぐにではないものの、いずれは9.56兆円の支払い金利増だ。
金利が1%上昇するごとに5%ずつの消費税上げが必要になる。 (注)正確にいうと5%の内4%が国税で1%が地方税であるから消費税1%あたり国税収入は2.5兆円ともいえる。しかし地方財政の赤字も考えると今後の消費税増税分はすべてが国の収入というわけにもいくまい。今まで通り4:1の割合で国と地方で4:1で分けるとなると、やはり消費税1%当たりの国の税収は2兆円と考えるのが妥当だと思われる。
ちなみに私がディーラーになった1980年の政策金利は12.75%という異常金利であったが今の0.0〜0.5%も異常である。5%程度の金利上昇などは想定外の話ではない。
長期金利が5%も上がるような状況、それは景気好転でもなりうるし、日本の財政が不安視されてもなりうるが、そうなれば日本の財政はもうハチャメチャということだ。
■消費増税による歳入増の大半は金利支払いに消える
景気が良くなれば税収が増えるだろうとおっしゃるかもしれないが、狂乱経済とまでいわれたバブルのまっ最中の1989年でも税収は60兆円しかない。当時は消費税が3%だったから5%と仮定したうえで税外収入を入れても歳入はせいぜい70兆円ほどであろう。歳入が200兆円とか300兆円に増えるのなら話は別であるが70兆円ぽっちでは、歳入の大半は金利支払いに消えてしまう。
だからこそ消費税を10%に上げる程度では焼け石に水だ。国民が今日から40%とか50%の消費税を受け入れるのならともかく、そんなことはありえないだろうから私は財政破綻近し、と言っている。
日経新聞社名古屋支社主催の講演会。台風の翌日、2000人の方が聞きに来てくださった
ちなみに2012(平成24)年度予算の法人税収見込みが8兆8000億円、所得税収見込みが13兆500億円であるから法人税と所得税の税率を2倍というとんでもないことにしても、44兆円の赤字は単純計算で22兆円しか減らない。ちなみに「所得税率を2倍」ということは1800万円以上の収入は、現在「所得税と住民税合わせて50%」だから全部税金で没収ということだ。
法人税を2倍にすれば大企業はすべて海外に逃げ出すだろうし、所得税を2倍にすれば個人は働かなくなる。
アインシュタインだったかの名言に「世の中で最も理解に苦しむものは、所得税である」というのがあるそうだが、この真意は「政府は人々に働いてほしいはずなのに労働に課税して、働く意思を削ぐのか?」ということだそうだ。
したがって税収増は消費税増税に頼らざるを得ない。
借金というものはいくら「借りるぞ」と宣言しても貸す方に金がなくなればできなくなる。不況で個人金融資産がこの10数年間ほとんど増えていない以上、近々貸す方の金が枯渇する。いずれ未達(国債が入札時に完売できない)が起きると思うのだ。これこそ財政破綻である。
■財政破綻の回避には……
財政破綻とは「満期になった国債元本を返済できない」ことだと思っている方が多いようだが日本での財政破綻とはそれだけでは済まない。予算の半分は借金という状態であるから、満期国債の元本返済を停めても、まだ日々のお金が不足する。すなわち政府機能がシャットダウンするということだ。子ども手当の支給はもちろん、自衛隊の給料も、東北の復興費も社会保障費も出ない。地方交付税も止まるから警察、消防士、ごみ収集の人たちの給料も出なくなる。さらには銀行への取り付け騒ぎが起きるだろうから社会は大混乱である。
ウェスティンホテル大阪での異業種懇親会にて。左より大阪毎日放送ニュースセンター局次長池崎さん、私、フランス料理「ステラマリス」シェフ宮本さん、 ウェスティンホテル大阪総支配人能川さん
この
事態を回避するには日銀が紙幣を刷るしかない。未達とは民間金融機関が国債を買い切れないことだから売れ残りを日銀が買うのである。輪転機をオーバヒートするくらいに刷りまくり、刷り上がったアツアツの紙幣を政府に渡し、日々の資金繰りに充ててもらうのだ。これを「引き受け」というのだが、現在は財政法第5条で禁止されている。過去、ハイパーインフレを引き起こしたからだ。
そもそも
中央銀行の国債引き受けはマネタイゼーションといって、過去、間違いなくハイパーインフレを引き起こしている。 しかし「財政破綻による社会的混乱」か「ハイパーインフレ」かの悪夢の選択になった時、政府・日銀は「今回だけはハイパーインフレは起きない」と根拠のない理由をつけて後者を選ぶと私は想像する。
■タクシー初乗り100万円の世界
ハイパーインフレとはタクシー初乗り100万円の世界である。汗水たらして貯めた100万円がタクシー乗車1回でなくなる。年金が月々20万円から30万円に上がるとしてもタクシー初乗りが100万円になれば30万円など無きに等しい。
勤めていたら給料も上がるだろうと安心するわけにはいかない。まずはそんな混乱期にその会社が生き延び得るかわからない。給料は毎月上がるにしてもパン代は毎日上がる。生きていくのが大変だ。1923年のドイツでは1月にパン1個が250マルクだったものが12月には3990億マルクにもなっているのだ。
国民の生活は困窮する一方、政府の借金は実質無くなる。国民の犠牲のもとでの財政再建だ。959兆円の累積赤字もタクシー初乗りが(ちょっと大げさな例ではあるが)9兆円になれば政府の債務は実質ゼロになるからだ。
政府機能がマヒするのが悪夢ならハイパーインフレも悪夢なのである。
松山での講演の前日、大学時代のクラスメート山崎君と40年ぶりの再会。道後温泉に連れて行ってもらう
ちなみに
消費税増税を「逆進性が高い(所得の低い人ほどダメージが大きいこと)」と反対することは、その結果、ハイパーインフレというとんでもなく逆進性が高い時代をおびき寄せていることに気が付くべきだ。
汗水たらして10年間で100万円貯めた人はタクシー1回ですべてがパーだ。こんな貧乏はない。100万円では不動産も株も買えないだろうし、きっと外貨建て資産を買う余裕もないからだ。
何はともあれ財政破綻が起きれば「財政破綻による社会的混乱」か「ハイパーインフレ」か、という悪夢の選択を迫られる。
ちなみに
現在のデフレに対処するために「日銀が国債を引き受けろ」と主張する識者や政治家がいるが、それは今まで述べてきたようにハイパーインフレを引き起こす禁じ手なのだ。高層ビルの50階で火事に出あい助けを求めている人に「飛び降りろ」と叫ぶようなものであり、そんなものは政策でもなんでもない。焼け死ぬにしても飛び降りるにしても修羅場には違いないのである。
■日銀の国債引き受け、最後の最後には……
福島原発で高濃度汚染水を貯めるために低濃度汚染水を海に流した。これなど禁じ手もいいところなのだが、やむを得ず流したのだ。これと同様、最後の最後には日銀は「国債引き受け」をやむをえず行うことになるだろう。しかし、それも修羅場だということだ。
一橋大学同窓のマーケット関係者の集まり。長きにわたり3カ月に1度集まっている。マーケットからはリタイアしている人が多いが同じ業界にいたもの同士、今でも共通の話題が多く、酒がおいしい
財政破綻が起これば「円」は大暴落である。破綻した国の通貨など誰もいらないからだ。日銀は今、大量に国債を保有している。保有している国債が無価値になれば、その見合いに発行されている日銀券を誰も信用しなくなる。円安ということだ。
一方、ハイパーインフレを選択しても「円」は暴落する。ハイパーインフレとは物価が急騰すること、すなわちお金の価値が急落することだ。お金とは日本ではドルでもユーロでもなく円である。「お金の価値が急落する」ということは「円が急落すること」だ。
出身高校(東京教育大学付属)のコートでのテニス。東邦大学大森病院消化器外科教授の島田選手を中心に集まっているOB会
藤巻選手は技量が追い付かないものの歳の功で長老扱い。
「国債バブル」と「円バブル」は同時にはじけるわけで、その時期は近いと私は考える。前回も書いたが、日本人のほとんどは間接的に大量に日本国債を保有している。年金資金も国債で運用されているし、生命保険料も40%以上が国債で運用されているし、銀行も大量に国債を保有している。ゆうちょ銀行などは資産の80%を国債で運用している。
「国債バブル」と「円バブル」が同時にはじければ、国民にとっては2重パンチである。その事態に備えるためにも保険としての「外貨建て資産の購入」を私は口を酸っぱくして勧めるのである。
藤巻健史(ふじまき・たけし) 1950年生まれ、一橋大卒、三井信託銀行、モルガン銀行など経て、フジマキ・ジャパン代表取締役。モルガン銀行時代はディーラーとして抜群の実績を上げ、東京支店長に。伝説のトレーダーと呼ばれる。ジョージ・ソロス氏のアドバイザーも務める。「外資の常識」(日経BP社、のち日経ビジネス人文庫)など著書多数。
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